【食中毒は他人事か?】割烹こめを123人発症――出前館・Rocket Nowはバッグ必須なのに、なぜUber Eatsだけ今も「必須ではない」のか?

割烹こめをの食中毒事件をきっかけにUber Eats・出前館・Rocket Nowの配達バッグ使用ルールを比較するイメージ フードデリバリー

2026年8月、東京・麻布十番納涼まつりで販売された「冷やしカニラーメン」を原因とする大規模な食中毒が発生した。

東京都が9月3日に公表した時点では、患者は78人。このうち3人が入院し、患者や食品などからサルモネラ属菌が検出された。

原因施設として発表されたのは、港区麻布十番の飲食店「割烹 こめを」だった。

ところが、そこで数字は止まらなかった。

9月11日の報道では、港区の清家愛区長が、約250人から体調不良の相談が寄せられ、そのうち123人を食中毒患者として認定したと説明している。

78人から123人。

一つの食品をきっかけに、これだけ多くの人が体調を崩した。

今回の件を見て、筆者が改めて考えたことがある。

毎日、大量の料理を街中で運んでいるフードデリバリーは、本当に今の運び方のままでいいのだろうか。

もちろん、今回の「割烹こめを」の食中毒は、Uber Eatsや出前館などのフードデリバリー配達員が原因となった事件ではない。

そこは最初にはっきりさせておきたい。

しかし、今回の事件を「飲食店の話だからフードデリバリーとは関係ない」で終わらせるのも違うと思う。

なぜなら、料理は作った瞬間に食品管理が終了するわけではないからだ。

店で作る。

容器に入れる。

保管する。

そして、客のところまで運ぶ。

フードデリバリー配達員は、この最後の「運ぶ」を仕事として引き受けている。

厚労省も「デリバリーは食中毒リスクが高まる」と注意している

これは単なる筆者の心配ではない。

厚生労働省は「テイクアウト・デリバリーにおける食中毒予防」で、テイクアウトやデリバリーは調理してから客が食べるまでの時間が長くなるため、特に気温が高い時期には食中毒のリスクが高まると注意を呼びかけている。

さらに厚労省は、調理した食品について、

管理厚労省が示している目安
冷たい食品速やかに10℃以下まで冷やす
温かい食品65℃以上で保管する
注意する温度帯食中毒菌は約20~50℃で増えやすい

としている。

保冷剤やクーラーボックス、冷蔵庫、温蔵庫などの活用についても示されている。

ここで重要なのは、

「料理を作った店だけ注意してください」という話ではない

ということだ。

調理してから客が食べるまでの時間を短くする。

温度管理をする。

デリバリーである以上、当然「配送時間」もこの問題に入ってくる。

出前館は「保温バッグ使用の徹底」

では、日本の主要フードデリバリー各社は、料理を運ぶバッグについてどう定めているのだろうか。

まず出前館。

出前館の配達員向け公式資料では、はっきりと「保温バッグ使用の徹底」と記載されている。

しかも資料では、

近いからと保温バッグを使用しない

ことを不適切な例として挙げている。

さらに、保温バッグを定期的にアルコール除菌すること、料理以外のものを入れないこと、破損やカビが発生した場合には交換することなども示している。

そして資料には、衛生管理を徹底することで「食中毒リスク低減」につながるという趣旨まで明記されている。

これは非常に分かりやすい。

近いか遠いかではない。

食品を配達するなら保温バッグを使用する。

配達員側から見ても、店側から見ても迷いにくいルールだ。

Rocket Nowも「バッグまたはボックスに格納して配達」

Rocket Nowも確認してみた。

2026年5月に改定されたドライバー向け規約では、配達準備の段階で、保温装備として配達バッグまたは配達ボックスを備えることが定められている。

さらに配達中についても、商品の品質と安全性を確保するため、配達バッグまたは配達ボックスに商品を格納したうえで配達することが規定されている。

断熱性や防水性に優れたバッグ・ボックスについては「推奨」という扱いだが、少なくとも、

「店でもらった手提げ袋をそのままぶら下げて走ればいい」

というルールではない。

ところがUber Eatsは今も「バッグ必須ではない」

ではUber Eatsはどうなのか。

ここで他社との違いが出てくる。

Uber Eatsの公式情報では、食品の安全性や注文品の適切な取り扱いのため、断熱素材の配達用バッグの使用を勧めている。

しかし、その直後にはこう書かれている。

断熱素材の配達用バッグの使用は必須ではありません。

2026年9月現在も、この基本方針は確認できる。

もちろんUberも、バッグを使うこと自体を否定しているわけではない。

むしろ断熱バッグの使用を勧め、自転車配送では揺れや天候から料理を保護するためにも専用バッグが有効だとしている。

さらに現在のUberには、一部の店舗が断熱バッグを使用できる配達員を求める注文の仕組みも存在する。

つまりUber自身も、料理によっては断熱バッグが重要であることを認識しているわけだ。

それでも通常のUber Eats配送については、一律の「バッグ必須」にはなっていない。

ここが、筆者にはどうしても引っかかる。

3社を比べると違いはかなり大きい

サービス配達バッグの扱い
出前館保温バッグ使用を徹底。「近いから使わない」ことも不適切例として掲載
Rocket Now配達バッグまたは配達ボックスに商品を格納したうえで配達
Uber Eats断熱バッグを推奨するが、一般的な配送では原則として必須ではない

ここで筆者が言いたいのは、

「バッグを使わなければ必ず食中毒になる」

という話ではない。

そんな単純なものではない。

食中毒には、原材料、調理、手洗い、器具の衛生状態、保存温度、配送時間、受け取り後の保存など、さまざまな要因が関係する。

バッグを使っていても、管理が悪ければ安全とは限らない。

逆にバッグを使用していないという一点だけで、その料理が危険だと断定することもできない。

しかし、それと、

「食品を運ぶ仕事なのだから、保温・保冷できるバッグに入れよう」

という話は別だ。

これは、それほど無理な要求だろうか。

筆者自身、月に10回ほどフードデリバリーを利用している

筆者はフードデリバリーで配達する側でもある。

しかし同時に、注文する側でもある。

月によって多少違うが、フードデリバリーは月に10回ほど利用している。

だから、フードデリバリーという仕組みそのものを否定したいわけではない。

むしろ便利だから使っている。

雨の日。

仕事で疲れた日。

家から出たくない日。

スマートフォンから注文すれば、飲食店の料理が自宅まで届く。

非常に便利なサービスだ。

だからこそ、配達する側には一つだけ言いたい。

頼むから、料理はちゃんとバッグに入れて運んでほしい。

それだけである。

実際にいる「手提げ袋をぶら下げて走る配達員」

街で配達していると、ときどき見かける。

店から受け取った料理を保温バッグに入れず、手提げ袋のまま持って自転車で走る配達員。

ハンドル周辺に袋をぶら下げて走っているケースもある。

筆者が普段見かける範囲では、比較的若そうな配達員で目につくことがある。

もちろん外見だけで実年齢も分からないし、副業なのか本業なのかも分からない。

問題なのは年齢ではない。

料理をバッグに入れずに運んでいることだ。

「すぐそこだから」

「5分だから」

「バッグを持つのが面倒だから」

「Uberでは必須じゃないから」

理由はいろいろあるかもしれない。

だが、注文した客からすれば関係ない。

客は配送料や商品代を払い、料理が普通の状態で届くことを前提に注文している。

そして店側も困る。配達員がバッグを持っているか分からない

ここで、配達員だけを叩いて終わるのも違う。

店舗側の立場でも考えてみたい。

Uber Eatsの配達員が商品を受け取りに来た。

しかし、店内にはバッグを持って入ってこなかった。

では、その配達員はバッグを持っていないのか。

それすら店員には分からない場合がある。

「外に停めた自転車にバッグがあります」

という配達員かもしれない。

本当にバッグそのものを持っていない配達員かもしれない。

店員が料理を渡したあと、きちんとバッグへ収納するのか。

そのまま袋を手に持って走り出すのか。

店側が最後まで追いかけて確認するわけにもいかない。

ここに問題がある。

「バッグを持っていないなら店が渡さなければいい」で済むのか

では、

「バッグを確認できない配達員には、店が商品を渡さなければいい」

とすれば解決するのだろうか。

話はそれほど簡単ではない。

なぜなら、Uber自身が一般的な配送について断熱バッグを必須としていないからだ。

配達員からすれば、Uberの通常ルール上、バッグを使用していないという一点だけで直ちに全国共通のルール違反になるわけではない。

一方、店側ではすでに注文を受けて料理を作っている。

そこへ配達員が到着する。

店舗ごと、店員ごとに、

「バッグを見せてください」

「バッグがないなら渡しません」

という判断をさせるのだろうか。

もし受け渡しができず再度配達員を探すことになれば、今度は料理を店内で待たせる時間が長くなる可能性もある。

客への到着も遅れる。

食品の安全を守るためのルールを、個々の店員の現場判断だけに依存させるのは無理がある。

だったらUberが最初から「食品配送はバッグ必須」にすればいい

筆者が最終的に言いたいのはここだ。

これは、一部のマナーの悪い配達員だけの問題ではない。

プラットフォームのルール設計の問題でもある。

出前館は保温バッグ使用を徹底する。

Rocket Nowはバッグまたはボックスに商品を格納して配達することを求める。

ならばUber Eatsも、

「食品を配送するときは、保温・保冷が可能な配達バッグを使用する」

と決めてしまえばいいのではないか。

Uber純正バッグである必要はない。

ロゴが入っている必要もない。

断熱性があり、食品配送に適した清潔なバッグならいい。

それなら配達員も迷わない。

店も迷わない。

客も安心しやすい。

「今まで食中毒を聞いたことがない」は安全の証明ではない

筆者自身、Uber Eatsや出前館などのフードデリバリーで、配達員のノーバッグ配送が直接原因と公的に特定された大規模食中毒事件を頻繁に耳にするわけではない。

それは良いことだ。

だが、

「今まで大事故が表面化していないから、このままでいい」

とはならない。

食品衛生とは、本来事故が起きる前にリスクを減らすためのものだからだ。

ヘルメットもそうだ。

シートベルトもそうだ。

保険もそうだ。

事故が起きた日に初めて必要になるものではない。

事故を想定して、先に備える。

食品を運ぶためのバッグも、同じように考えていいのではないだろうか。

もし本当に「配送」が原因の食中毒事故が起きたら?

そして、もう一つ大きな疑問が残る。

仮に将来、

店では適切に調理・保管されていた料理を配達員が受け取り、その後の長時間配送や不適切な温度管理などによって食品の状態が悪化し、客が食中毒を発症したとする。

その場合、誰が責任を負うのだろうか。

飲食店なのか。

料理を運んだ配達員なのか。

Uberなどのプラットフォームなのか。

客への返金だけで終わるのか。

治療費はどうなるのか。

入院した場合はどうなるのか。

配達員が加入している保険で補償されるのか。

そして、バッグを必須としていないプラットフォーム側の責任はどう整理されるのか。

もちろん、実際の食中毒では原因菌、店舗の衛生状態、調理方法、保存状況、配送時間、受け取り後の保管などを調査し、原因を特定しなければならない。

「配達員が運んだから配達員が全部悪い」と単純に決まる話ではない。

だからこそ、この問題は一度きちんと調べる価値がある。

この責任と補償については、本シリーズ第3回で詳しく検証する。

配達員へ。とにかくバッグを使ってほしい

最後に、同じフードデリバリーの現場にいる人間として書いておく。

料理はバッグに入れて運んでほしい。

これは難しい話ではない。

高価な設備を買えと言っているわけでもない。

料理を運ぶ。

そのためのバッグを用意する。

バッグを清潔にする。

温かいものと冷たいものを可能な範囲で分ける。

必要以上に長時間持ち回らない。

そして客へ届ける。

食品を運んで報酬を受け取る以上、最低限そこまではやろう。

Uberが「必須ではない」と書いているから、やらなくてもいい。

その考え方で本当にいいのだろうか。

ルール上できることと、食品を扱う仕事としてやるべきことは同じではない。

食中毒が起きてからでは遅い

今回の「割烹こめを」の食中毒では、東京都が最初に発表した78人から、その後123人まで食中毒患者の認定数が増えたと報じられた。

そして日本では過去に、さらに大規模な食中毒事件が起きている。

一つの飲食店、一つの調理拠点、一つのイベント出店から、数百人規模まで患者が広がった事例もある。

中には死亡者を出した事件もある。

食中毒は「腹を壊した」で済むとは限らない。

だから店も衛生管理をする。

だから厚労省も注意喚起をする。

だったら料理を最後に客まで届けるフードデリバリーも、同じように考えるべきだろう。

出前館は保温バッグ使用を徹底している。

Rocket Nowもバッグまたはボックスへの格納を求めている。

それでもUber Eatsは、現在も一般的な配送について断熱バッグを「必須ではない」としている。

食中毒が起きてからバッグ必須へ変更するのでは遅い。

食品を運ぶサービスだからこそ、事故が起きる前にルールを整えてほしい。

そして配達員側も、ルールで強制されるのを待つ必要はない。

料理を受け取ったらバッグへ入れる。

まずは、それでいい。


次回:日本ではどんな大規模食中毒事件が起きてきたのか

今回の食中毒では123人が患者として認定されたと報じられている。

しかし、日本の食中毒史を見ると、さらに桁の大きな事件が存在する。

患者892人。

イベント出店から500人以上。

そして「焼肉酒家えびす」のユッケによる食中毒では、181人が発症し、5人が死亡した。

第2回では、飲食店・イベント出店・大量調理などで実際に発生した大規模食中毒事件を、発生年、患者数、入院者数、死亡者数、原因食品、病因物質まで整理する。

「食中毒は、実際にどこまで大きな事故になるのか」

数字から振り返ってみたい。


参考資料

  • 厚生労働省「テイクアウト・デリバリーにおける食中毒予防」
  • 東京都「食中毒の発生について」
  • 出前館 配達員向け衛生管理資料
  • Rocket Now「ロケットナウ利用約款―ドライバー向け」
  • Uber Eats「注文品の取り扱いに関する配達パートナー向け情報」
  • Uber Eats「断熱バッグ注文」に関する配達パートナー向け情報

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