相模原市で17歳の高校生が死亡した事件を調べていたら、聞き慣れない言葉が出てきました。
「コルク狩り」。
最初に聞いたときは、正直こう思いました。
まだそんなことをやっているのか?
ところが調べてみると、「まだやっているのか?」では済まない話でした。
コルク半を巡る暴行、恐喝、強盗事件は、2010年代から場所を変え、人を変えながら何度も報道されています。
そして2026年。
17歳の高校生が死亡した相模原の事件でも、親友から「コルク狩りに遭ったのかもしれない」という証言まで出てきました。
もちろん、今回の事件が本当にコルク狩りだったのかは、この記事を書いている時点では確定していません。
しかし、それとは別に大きな疑問があります。
何年同じことをやっているのでしょうか。
そして、何回事件になれば「昔からある不良文化」ではなく、継続的に対処すべき問題として扱われるのでしょうか。
## そもそも「コルク半」とは何なのか
まず確認しておきたいのは、コルク半そのものが犯罪道具というわけではないことです。
半キャップ型のバイク用ヘルメットで、内部の緩衝材にコルクを使用した製品などが「コルク半」と呼ばれています。
2026年現在でも普通に市販されています。
例えばNBSブランドのコルク半には、125cc以下を対象とし、SG規格に適合した商品があります。販売情報では届出事業者として株式会社ワイビーエー、検査機関として製品安全協会が記載されています。
つまり、普通の商品です。
ところが一部の不良グループの世界では、この普通のヘルメットがいつの間にか「誰が被っていいのか」「どこの地域なら被っていいのか」というステータスや縄張りの記号になった。
そして、
「誰に許可を取ってコルクをかぶっているんだ」
「この地域でコルクをかぶれるのは俺たちだけだ」
などと因縁をつける。
一般人からすると意味が分かりません。
公道で普通に販売されているヘルメットを被るのに、なぜどこかの不良グループの許可が必要なのでしょうか。
必要ありません。
それでも暴力に発展してきた。
これが「コルク狩り」です。
## 2013年――すでに「誰の許可で被っているんだ」
過去の報道を調べると、少なくとも2013年には東京都内でコルク半を巡る事件が報じられています。
大田区では、
「誰に許可を取ってコルクをかぶってんだ?」
昭島市では、
「昭島でコルクをかぶれるのは俺達だけだ」
といった趣旨の因縁が報じられました。
もうこの時点で十分おかしい。
しかし、これで終わりませんでした。
## 2017年――今度は「足立のルール」
2017年には、コルク半を着用していた20歳男性に対し、17歳の少女と少年らが、
「足立のルールではコルクをかぶるとタダではすまない」
などと因縁をつけた事件が報じられています。
暴行を加えたうえ、ヘルメットや原付バイクを脅し取った疑いで逮捕されました。
ここまで来ると「コルク半を巡る若者同士の喧嘩」などという軽い話ではありません。
恐喝や暴行です。
しかも2013年から数年経過して、また同じようなことが起きている。
## 2020年――川崎でも「なんでコルク持ってんの」
さらに2020年。
今度は神奈川県川崎市です。
18歳の高校生と17歳の少年が、22歳の男性に対し、
「なんでコルク持ってんの」
などと因縁をつけ、ヘルメットを奪ったとして恐喝容疑で逮捕されたと報じられました。
2013年。
2017年。
2020年。
場所も人間も変わっています。
しかし、やっていることはほとんど同じです。
## バイク店の「まだやってんのかと思った」が逆に怖い
この2020年の川崎事件について、川崎市内のバイク店に勤務する男性が興味深いことを話しています。
コルク狩りの全盛期について「20年前くらい」と説明したうえで、
「まだやってんのかと思った」
という趣旨のコメントをしています。
いや、ちょっと待ってください。
「まだやってんのか」で済ませていいのでしょうか。
もちろん、このバイク店勤務の男性個人にコルク狩りを止める責任があるわけではありません。
しかし、このコメントは逆に重要です。
業界の人間から「まだやっているのか」と言われるほど昔から知られていたということだからです。
だったら、
「まだやってんのか」
ではなく、
「まだ無くせていないのか?」
ではないでしょうか。
この軽い扱われ方そのものが、コルク狩りが何十年も「昔からある不良文化」の一つとして処理されてきたことを象徴しているように感じます。
## そして2023年――バイク7台、62点、約241万円相当
そして令和になっても終わりません。
2023年には東京・浅草周辺で大規模な事件が発生しました。
警視庁は、16~19歳の少年らを含む不良グループ11人を強盗や恐喝の疑いで逮捕。
男子高校生らのグループに対して、
「どこ走ってるのかわかってんのか」
などと因縁をつけたとされています。
奪われたとされるのは現金だけではありません。
バイク7台。
ヘルメットなど62点。
時価総額は約241万円相当。
一部の容疑者からは「縄張りを荒らされた」という趣旨の供述まで出ています。
2023年ですよ。
昭和ではありません。
平成初期でもありません。
令和です。
## 2026年――相模原17歳死亡事件でまた「コルク狩り」
そして今回です。
2026年8月22日未明、相模原市中央区の路上で高校2年生の清水刹那さん(17)が倒れているのが見つかり、その後死亡しました。
捜査関係者の情報などから、神奈川県警は傷害致死事件として捜査しています。
その後、清水さんの親友がNEWSポストセブンの取材に対し、清水さんが地元のバイクチームを抜けて別のチームに入っていたことを証言。
さらに、この地域ではチームに入っていない人物がコルク半を被っていると因縁をつけられることがあり、
「刹那はコルク狩りに遭ったのかも」
という趣旨の話をしています。
繰り返しますが、これは親友による推測です。
今回の死亡事件の動機がコルク狩りだったと警察が発表したわけではありません。
しかし問題はそこだけではありません。
2026年になって、17歳が死亡した事件の背景を語る際に、まだ「コルク狩り」という言葉が普通に出てくること自体が異常ではないでしょうか。
## では「コルク半を作るメーカーが悪い」のか?
ここまで来ると、わざと極端なことを言いたくなります。
だったらコルク半を作っているメーカーが悪いのでしょうか。
販売をやめればいいのでしょうか。
もちろん、そんな単純な話ではありません。
現在もNBSブランドなどのコルク半は普通に販売されています。
SG規格に適合し、125cc以下を対象として公道で使用できる商品もあります。
カスタムペイントを行うショップでは、現在もNBS製コルク半の販売やオーダーペイントを受け付けています。
商品として存在すること自体がおかしいわけではない。
むしろ不思議なのは逆です。
普通に合法的に販売されている商品なのに、なぜ一部の不良グループが勝手に「俺たちの物」のような意味を付けられるのでしょうか。
そして、それを理由に人を殴り、脅し、物を奪う事件が何度も起きている。
商品を禁止するより先に、そちらをどうにかするのが普通でしょう。
## メーカーや販売業界から強い啓発は出てきたのか?
そこで、もう一つ疑問が出てきます。
これだけ「コルク狩り」という名前で商品が事件に登場してきたなら、メーカーや販売業界は何か発信してきたのでしょうか。
今回、公開情報を調べた範囲では、少なくとも筆者が確認できた範囲で、コルク半メーカーや販売業界による全国的な「コルク狩り撲滅」のような大規模キャンペーンは確認できませんでした。
もちろん、だからメーカーに責任があるという話ではありません。
メーカーはヘルメットを作っている。
暴行しているのは別の人間です。
しかし、自社や業界の商品名が何年にもわたって「○○狩り」という犯罪文化の名前として使われている。
そう考えると、
「コルク半を使った暴力・恐喝を許さない」
くらいのメッセージを業界側からもっと発信してもいいのではないか、とは思います。
そして何より不思議なのは、これまで社会がメーカーや販売業界に対して、そのような問題提起をどれだけしてきたのかということです。
## じゃあコルク半を禁止するのか?――そんな話ではない
ここで必ず出てきそうなのが、
「だったらコルク半を禁止すればいい」
という話です。
いや、それでは順番がおかしいでしょう。
普通の商品を禁止しなければ止められないほど、大人側に知恵がないのでしょうか。
コルク半を被っている人間を襲う。
縄張りを主張する。
ヘルメットやバイクを奪う。
問題はそちらです。
コルク半そのものを禁止する話ではありません。
むしろ、
「こんなことを何十年も続けさせているなら、いっそのことコルク半まで禁止するのか?」
という皮肉を言いたくなるほど、長期間同じことが繰り返されているという話です。
## 実は神奈川県は「何もしていない」わけではない
ここは今回調べていて非常に重要だった部分です。
神奈川県にはすでに「暴走族等の追放の促進に関する条例」があります。
しかも内容はかなり踏み込んでいます。
県には総合的な施策を実施する責務があり、保護者には少年を暴走族へ加入させないこと、加入していることを知った場合には脱退させること、暴走行為をさせないことなどが求められています。
学校や職場などにも、加入防止や脱退促進への取り組みが求められています。
事業者にも、暴走行為を助長しないよう努めることが規定されています。
さらに少年への暴走族加入の勧誘や強制、脱退妨害などについても禁止規定があります。
神奈川県警には交通捜査課の「暴走族対策室」もあります。
つまり、
「警察も県も何もやっていない」
という批判は正確ではありません。
やっています。
条例まであります。
対策室まであります。
だからこそ、もっと厳しい疑問が出てきます。
## 条例まであるのに、なぜ世代交代して残るのか
神奈川県警自身が、条例制定の理由として非常に重要な説明をしています。
暴走族グループを取締りによって解体しても、少年を中心に世代交代が頻繁に繰り返され、根絶が困難だというのです。
さらに背景として、
少年の規範意識。
家庭。
学校。
地域社会。
こうした環境が複雑に絡んでいるとしています。
これはまさに問題の核心でしょう。
一つのグループを潰して終わりではない。
16歳を逮捕しても、その下に13歳、14歳、15歳がいる。
先輩から後輩へ文化が伝わる。
今ならそこへSNSまで加わります。
「俺たちの地域ではコルクを被るな」
「誰の許可を取った」
「縄張りを荒らした」
こんな意味不明な価値観が、世代を越えて引き継がれていく。
だったら、逮捕だけでは終わらないのも当然です。
## 神奈川県警は家庭環境まで問題として挙げている
さらに神奈川県警の暴走族対策ページを見ると、かなり踏み込んだ内容が掲載されています。
暴走族に加入した少年の動機として、
家庭や学校、職場がおもしろくない。
先輩や友人に誘われた。
仲間が欲しかった。
改造バイクで暴走したかった。
こうした理由が挙げられています。
家庭についても、親兄弟との関係、両親の不仲、親から注意されないことなどが紹介されています。
そして県警は保護者に対し、子どもの行動だけでなく服装や髪型の変化、深夜外出、バイク、派手なヘルメットなどにも注意するよう呼びかけています。
さらに、
ダメなものは「ダメ」と教える。
そこまで明確に書いてあります。
つまり警察自身も分かっているわけです。
これは単なる交通違反の問題ではありません。
家庭、学校、仲間、地域社会まで含めた少年問題なのです。
## だったら政治家や自治体は「次の13歳」をどう止めるのか
ここから先が政治の仕事ではないでしょうか。
法律を一本作れば解決する、という単純な話ではありません。
すでに条例まである。
それでも残る。
だったら制度を作って終わりではなく、
「なぜまだ残っているのか」
を検証する必要があります。
どの地域で少年グループが増えているのか。
どの年齢から接触が始まるのか。
SNSでどのように文化が拡散しているのか。
学校を離れ始めた少年に誰が接触するのか。
家庭だけでは止められない場合、どこが介入するのか。
暴走族や不良グループから抜けたい少年をどう守るのか。
そして「コルク狩り」のような古い文化が復活していないか。
政治家には、こういう地味な問題こそ拾ってほしい。
事件が起きた日に「再発防止に努めます」と言って終わるのではなく、5年後、10年後に同じ事件が起きていないかまで見る。
それが再発防止ではないでしょうか。
## 「まだやってんのか」ではなく「なぜまだ残っているのか」
2013年。
2017年。
2020年。
2023年。
そして2026年には、17歳死亡事件の背景候補として再び「コルク狩り」という言葉が出てきました。
今回の相模原事件が本当にコルク狩りだったのかは、今後の捜査を待たなければ分かりません。
しかし、コルク狩りという文化そのものが長期間存在し、実際に何度も事件になってきたことは別問題として考える必要があります。
バイク店の人が言った、
「まだやってんのかと思った」
という感覚。
おそらく多くの大人も同じでしょう。
でも、そろそろ問いを変えた方がいい。
「まだやっているのか?」
ではありません。
**「なぜ、まだ残っているのか?」**
です。
コルク半はただのヘルメットです。
公道は誰かの縄張りではありません。
どこの地域で誰が被ろうが、不良グループに許可をもらう必要などありません。
それを理由に因縁をつけ、殴り、脅し、物を奪えば犯罪です。
「コルク狩り」なんて名前を付けるから、どこか不良文化の伝統行事のように聞こえてしまう。
そんな格好いいものではありません。
普通に市販されているヘルメットを理由に、人に因縁をつける。
それだけの話です。
そして、それが何年も事件を生んでいるのなら、大人側も、
「昔からあるから」
「まだやってるの?」
で笑って終わらせる時期は、とっくに過ぎています。
条例まで作った。
警察も対策している。
それでも世代交代して残る。
ならば次に必要なのは、制度を作ったことを成果にするのではなく、**本当に少年たちの世界からこの文化が消えたのかを追い続けること**でしょう。
2026年にも「コルク狩り」という言葉が死亡事件の背景候補として出てきた。
その事実を、大人の側こそ軽く見ない方がいいと思います。



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