「自社経済圏」でも結局Uberが運ぶ?マックデリバリーから見える外食宅配の本当の構造

マクドナルドなどの自社アプリで受けた注文を、Uberなど外部配送網の配達員が届けるフードデリバリーの構造を表したイメージ フードデリバリー

menuが2026年9月30日でフードデリバリーサービスを終了する。

その後の市場については、Uber Eats、出前館、ロケットナウによる「3強時代」が注目されている。

さらに、その裏側ではマクドナルドやすかいらーくなど、大手外食チェーンによる「自社経済圏」の強化が進んでいるという。

自社アプリで注文を受ける。

自社会員として顧客を囲う。

ポイントを付ける。

購買履歴を蓄積する。

そして、次の注文や店内利用につなげる。

この考え方自体は何も間違っていない。

むしろ企業からすれば当然の戦略だろう。

だが、フードデリバリーを実際にやっている側から見ると、ここでどうしても一つ気になることがある。

その料理、最後は誰が客の家まで運ぶのか?

ここまで見なければ、「自社経済圏」の本当の姿は見えてこない。

自社アプリで注文を取ることと、自社配送は別の話

「自社経済圏」という言葉だけを聞くと、注文から配送まで全部その会社の中で完結しているようにも聞こえる。

だが、現実はそんな単純ではない。

例えばマックデリバリー。

利用者から見れば、マクドナルド公式アプリや公式サービスから注文している。

もちろん注文情報も、会員情報も、ポイントもマクドナルド側にある。

ところがマクドナルドのマックデリバリーサービス利用規約を見ると、商品の配送について外部の配送業者を利用する場合がある。

そこにはUber Eats Japanなどの名前も記載されている。

つまり、

注文はマクドナルド。
顧客との関係もマクドナルド。
しかし配送はUberなどの外部。

こんな構造が普通に存在するわけだ。

これを見れば、「自社経済圏=全部自社でやる」という話ではないことが分かる。

回り回って、結局外部の力を使っている

ここが今回、一番面白いところだと思う。

Uber Eatsなど外部プラットフォームに顧客を握られたくない。

だから自社アプリを強くする。

自社で注文を受ける。

自社でポイントを配る。

自社で顧客データを持つ。

ここまでは完全に理解できる。

ところが、料理を玄関まで持っていく物流になると話が変わる。

全国の各店舗に、ピークタイムに合わせて十分な人数の専属配達員を置くのか。

昼12時には大量に必要。

午後3時には暇になる。

夜7時にはまた大量に必要。

雨なら注文が増える。

猛暑の日も増える。

逆に暇な日には配達員が余る。

この波を全部、自社雇用や自社配送だけで吸収しようとすると、とにかく重い。

そこで外部の配送ネットワークが出てくる。

要するに、

客は自社で囲う。
配送は必要な分だけ外部から買う。

企業としてはこちらの方が合理的なのである。

Uber Directは、まさに「自社経済圏」の裏方になるサービス

UberにはUber Directというサービスがある。

これはUber Eatsアプリの中から注文してもらう通常のデリバリーとは違う。

企業が自社サイトや自社アプリで受けた注文を、Uberの配送ネットワークを使って客まで届けられる仕組みだ。

例えば客が企業の公式アプリから商品を買う。

客から見れば、その企業から直接買っている。

Uber Eatsで注文したわけではない。

それでも配送部分だけUberのネットワークを使える。

これは「自社経済圏」と非常に相性がいい。

企業は顧客を自社に残せる。

Uberは配送の仕事を取れる。

つまり、

マクドナルドがUber Eatsから客を取り戻すことと、Uberそのものから離れることは同じではない。

ここを分けて考えなければならない。

「Uber Eatsから客を奪う」だけで終わらない

例えば、これまでUber Eatsからマクドナルドを注文していた客が、今後マックデリバリーへ移ったとする。

表面的にはUber Eatsが1件注文を失ったことになる。

確かにそうだ。

だが、そのマックデリバリーの配送をUber側が請け負えばどうなるか。

Uberは完全に消えていない。

立場が変わっただけだ。

注文を集めるプラットフォームから、配送インフラへ。

ここはかなり重要だ。

フードデリバリー市場を見るときに、「Uber Eatsアプリから何件注文されたか」だけを見ていると、この動きは見落としてしまう。

裏側の配送市場まで見る必要がある。

むしろ自社経済圏が増えるほど、外部配送が必要になる可能性もある

ここには、ちょっとした逆転現象もある。

企業がどんどん自社ECを作る。

公式アプリを作る。

自社会員を増やす。

自社で注文を取る。

しかし、自前で全国配送網を持つつもりはない。

そうなったら何が必要になるのか。

外部のラストワンマイル配送網だ。

だから、

「自社経済圏が伸びる=Uberの仕事がなくなる」

とは限らない。

むしろ自社で注文を取る会社が増えれば増えるほど、「配送だけやってくれる会社」の需要が増える可能性がある。

Uber Directはまさにそこを狙っている。

Uberは、ただの「食事を注文するアプリ」だけではなくなってきている。

注文を取る会社が別にいてもいい。

商品を作る会社が別にいてもいい。

最後に物を運ぶ部分へ入れればいい。

こう考えると、フードデリバリーの見え方はかなり変わってくる。

表では競合、裏では取引相手

これも面白い。

マクドナルドから見れば、Uber Eatsは自社の客を持っていく存在でもある。

だから自社アプリを強くする。

一方で物流面では、Uberの配送能力を使うこともある。

つまり表では競合していても、裏では取引相手になれる。

敵か味方かという単純な関係ではない。

企業同士が、それぞれ自分の欲しい部分だけを取り合っている。

マクドナルドは顧客との関係を握りたい。

Uberは配送を握りたい。

だから、

「客はうちで持つ。運ぶところは頼む」

という関係が成立する。

これが現代の自社経済圏の一つの姿なのだろう。

そして結局、最後に走るのは配達員

ここには少し皮肉もある。

ネットを見ると今でも、フードデリバリー配達員について、

「底辺」

「汚い」

「誰でもできる」

などと馬鹿にする声がある。

Yahoo!ニュースのコメント欄などでも、配達員という仕事そのものを下に見る人間は珍しくない。

だが社会の仕組みを見ると、その話と完全に逆のことが起きている。

企業は配送員を常時大量に雇いたくない。

だが注文が入った時には誰かに運んでもらいたい。

雨の日でも運んでほしい。

猛暑でも運んでほしい。

昼のピークだけ大量に欲しい。

夜のピークにも欲しい。

その需要を埋めているのが、必要な時に稼働できるギグワーカーのネットワークである。

つまりネットでは「そんな仕事」と馬鹿にされる一方で、企業側はその労働力を極めて合理的に利用している。

「配達員なんて」と笑っている社会の裏側で、その配達員を必要な時だけ呼び出せる仕組みが、大企業の物流戦略に組み込まれている。

なかなか皮肉な話だ。

自社経済圏という分析は間違っていない

ここは勘違いしないようにしたい。

大手外食チェーンが自社経済圏を強化している、という分析そのものは間違っていない。

顧客情報を自社で持つ。

ポイントを付ける。

自社アプリを使わせる。

Uber Eatsや出前館だけに顧客との接点を握らせない。

企業として当然やるだろう。

ただし、その話だけで終わると半分しか見えていない。

自社経済圏を作った後、

「では、その商品を誰が運ぶのか?」

ここまで見て初めて、フードデリバリーの全体像になる。

本当の「自社経済圏」は全部自社でやることではない

結局、現在の企業戦略はもっとしたたかだ。

顧客データは自社。

会員は自社。

ポイントも自社。

注文窓口も自社。

しかし、最も重くて変動が激しい物流だけは外部も使う。

何でも自分たちで抱える必要はない。

利益を残せる部分だけ自社で握り、外に出した方が効率のいい部分は外へ出す。

むしろ経営としては当然だろう。

だから「自社経済圏」という言葉を、

「自社だけで全部やる世界」

と理解する方が間違っている。

現実には、

自社経済圏を維持するために、外部経済圏の力を借りる。

そんな構造になっている。

フードデリバリー3強だけを見ても市場は分からない

menu撤退後、Uber Eats、出前館、ロケットナウがどうなるのか。

もちろん重要だ。

しかし今後は、それだけを追っていても不十分だと思う。

見るべきなのは3つだ。

  • 誰が注文窓口を握るのか
  • 誰が顧客データを握るのか
  • 誰が最後の1kmを運ぶのか

この3つは必ずしも同じ会社ではない。

マックの注文をマックアプリで取っても、配送が外部なら外部の仕事は残る。

自社経済圏を作っても、物流まで完全に自社化するとは限らない。

むしろ今後は、

表では自社経済圏。
裏では巨大な外部配送網。

この組み合わせがもっと増えるのではないか。

そして、その仕組みの一番最後で原付や自転車に乗っているのは、一人の配達員だ。

「自社経済圏」という言葉だけでは見えない。

だが、その裏側まで見れば、フードデリバリーという産業が何によって動いているのかがよく分かる。

回り回って、最後は外部の力を使う。

それが今のフードデリバリー市場の、かなり現実的な姿なのではないだろうか。

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