「断っていい」と言いながら応答率は下がる――Uber Eatsが配達員に突きつける矛盾

Uber Eatsの配達依頼は自由に拒否できるという説明と、拒否によって応答率が57%に低下した配達員アプリの表示を対比したアニメ風イラスト。 デリバリー副業

「配達リクエストは、受けても断ってもいい」

Uber Eatsは、配達パートナーにそう説明している。

実際、公式の技術サービス契約にも、配達依頼を承諾するか拒否するかは配達パートナー自身が決められると明記されている。

それなら、採算の合わない仕事を断っても何も問題はないはずだ。

ところが、実際の配達員アプリを開くと、そこには「応答率」という数字がある。

断れば下がる。断り続ければ、さらに下がる。

しかもUberは、応答率を高く維持することが重要だと説明している。

受ける義務はない。それなのに、なぜ断った回数を数え、配達員に見せ続けるのか。

今回は、この仕組みを考えたい。

契約書には「いかなるリクエストも拒絶できる」とある

まず、Uber Eatsの公式契約書を確認してみよう。

配達パートナー向けの技術サービス契約には、依頼を承諾するかどうかは本人が決定し、オンライン中であっても配送サービスを提供する義務は負わないという趣旨が明記されている。

さらに、いかなるリクエストも承諾または拒絶できると説明している。

これは重要な原則だ。

配達パートナーは、自分の車両を使い、燃料代や整備費を負担しながら仕事をしている。

提示された距離、報酬、所要時間、道路状況を確認し、引き受けるかどうかを判断する。

それは仕事をするうえで、ごく自然なことではないだろうか。

ところが、契約上認められた拒否という選択が、アプリの中では別の意味を持ち始める。

応答率57%。拒否した43件は何を意味するのか

筆者のUber Driverアプリには、次の数字が表示されていた。

  • 直近の限定配達リクエスト:100件
  • 受け付け済み:57件
  • 拒否済み:43件
  • 応答率:57%

つまり、100件の依頼のうち43件を断ったことになる。

では、この43件はすべて受けるべき仕事だったのだろうか。

もちろん、そんなことはない。

距離が長すぎる。報酬が見合わない。配達先が稼働エリアから大きく外れる。道路事情が悪い。

配達員が拒否する理由はさまざまだ。

しかし、応答率の数字には、そうした事情が表れない。

「断った」という結果だけが残り、「なぜ断ったのか」は数字から見えない。

ここに、応答率という指標の大きな問題がある。

18.3kmで991円。それでも断れば拒否1件

実際に、筆者が50ccの原付で稼働していた際、こんな依頼が届いた。

  • 予定距離:18.3km
  • 予定所要時間:46分
  • 提示報酬:991円
  • 配達先:横浜市瀬谷区方面

1km当たりの提示報酬は約54円。

46分で完了した場合の売上時給は、単純計算で約1,293円となる。

しかし、46分というのは表示上の予定所要時間だ。

配達先から次の注文が取れる場所へ移動する時間まで含まれているわけではない。

しかも50ccの原付には、法定最高速度30km/hや二段階右折などの制約がある。

こうした条件を考えて、引き受けないと判断することは十分にあり得る。

ところが、この依頼を断っても、応答率上は単なる拒否1件だ。

無理な依頼を断ることと、仕事をする意思がないことは、まったく違う。

その違いを、Uber Eatsの応答率はどこまで理解しているのだろうか。

Uberは「拒否しても評価に影響しない」と説明している

ここで、もう一つの公式説明を見てみよう。

Uber Eatsの配達報酬に関する公式ページでは、リクエストを拒否しても通常どおり次の依頼を受け取ることができ、評価への影響はないと説明されている。

これだけ読めば、配達員が拒否を気にする必要はなさそうだ。

しかし、別の公式ヘルプには、応答率を高く維持することが重要だと記載されている。

さらに、一部の特別オファーでは、一定の応答率が参加資格になる場合があるという。

つまり、拒否が通常の配車や顧客評価に直ちに悪影響を与えるとは限らなくても、応答率という数字が何の意味も持たないわけではない。

それなら、Uberのいう「評価に影響しない」とは、具体的にどの評価のことなのか。

配達員が誤解しないよう、説明を整理する必要があるのではないだろうか。

「拒否すると顧客満足度が下がる」という説明

筆者がさらに気になったのは、実際のアプリに表示された文章だ。

そこには、応答率が高ければ商品受け取りまでの時間が短縮され、配達員全体の効率的な収入につながるという説明がある。

そして、配達依頼を拒否すると注文者の待ち時間が長くなり、顧客満足度の低下につながると書かれている。

なるほど。注文者を待たせないことが大切なのは理解できる。

だが、ここで聞きたい。

そもそも配達員が受けにくい条件の依頼を出しているのは誰なのか。

18.3km・991円の依頼を提示し、それを断った配達員に対して、顧客満足度への影響を説明する。

しかし、配達員が受け入れやすい距離や報酬を設計する責任は、運営側にもあるはずだ。

注文者を待たせる問題を、拒否した配達員の側からだけ説明するのは、公平なのだろうか。

拒否された案件は、その後どうなるのか

Uberの公式ヘルプによると、見送られた配達リクエストは近くの別の配達パートナーに新たに割り当てられる。

それでは、何人もの配達員が同じ案件を断った場合はどうなるのだろう。

報酬は引き上げられるのか。

より適切な距離にいる配達員へ割り当て直されるのか。

何人もの配達員の応答率が下がるのか。

これらは、配達員にとって重要な疑問だ。

少なくとも、拒否した理由を分析せずに承諾率だけを追いかけても、問題の根本的な改善にはつながらないだろう。

「受けたくなければオフラインに」という説明の限界

Uber公式ヘルプでは、配達依頼を受け付けたくない、あるいは受け付けられない場合には、オフラインにするよう求めている。

しかし、仕事をしたくないから断る場合と、提示された特定の案件だけを断る場合は違う。

配達員はオンラインにして仕事を探している。

だからといって、届いた依頼をすべて引き受けられるわけではない。

近距離なら受ける。条件のよい中距離なら受ける。採算の合わない遠距離は断る。

それが個人事業主としての判断だ。

「この案件は受けない」という判断に対して、「それならオフラインに」という説明は、あまりにも大ざっぱではないか。

配達中に次々と届くリクエストと、安全の問題

さらに、配達員の現場には応答率だけでは片づかない問題がある。

まだ配達が終わっていないのに、次のリクエストが次々と届くことだ。

バイクで走行中に通知が届けば、気になる。

だが、運転中に画面を注視するのは危険だ。安全な場所に停車してから確認する必要がある。

そこで疑問が生じる。

安全に停車してから判断できるだけの時間は確保されているのか。

通知を見送った場合、どの種類のリクエストが応答率に算入されるのか。

Uberは配車レーダーについて、見送りは応答率に影響しないと説明している。一方、通常の限定リクエストには応答率の集計がある。

配達員が走行中にこうした違いを気にしなければならないとしたら、それ自体が安全面の課題ではないだろうか。

この問題は、今後の連載で詳しく検証する。

応答率は誰のための数字なのか

配達員が仕事を選ぶことは、契約上認められている。

一方でUberは、応答率を集計し、高く維持することが重要だと説明している。

さらに、拒否が注文者の待ち時間や顧客満足度に影響するという説明まである。

もちろん、応答率という指標の存在だけで、配達員に不当な制裁が行われていると断定することはできない。

しかし、配達員が自由に断れるという説明と、断ることを否定的に受け取らせる画面表示が並んでいるのは事実だ。

仕事を選ぶ自由があるのなら、その選択をした配達員が、数字に追われず安心して働ける仕組みも必要ではないか。

筆者はUber Eatsに聞きたい。

応答率は、誰のために存在しているのか。

そして、理不尽な条件の依頼を断った配達員まで、同じ数字で評価する必要があるのか。

自由な働き方を掲げるのであれば、その自由をアプリの中でも尊重してほしい。

次回は、50ccの原付に届いた「18.3km・991円」という実例から、長距離配車の理不尽さと、届けた先に仕事があるのかという問題を追及する。

参考資料

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