ははあ、なるほど。
ブレイキングダウンでございますか。
あれを見て何が悪いのか。
どうして大人が眉をひそめるのか。
そんなに騒ぐほどのことなのか。
そう思う人もいるでしょう。
結論から言えば、見ることそのものが悪いとは思いません。
人が向かい合う。
睨み合う。
怒鳴り合う。
拳を交える。
勝てば名前が売れ、動画は回り、周りも騒ぐ。
そういう剥き出しの熱気を見れば、見ている側まで気持ちが大きくなることもあるでしょう。
これは、今に始まった話ではありません。
昔もそうでした。
プロレスが流行れば、翌日の教室では技を真似する子どもが出る。
格闘技の興行が流行れば、にわか仕込みで強くなったような顔をする者が出る。
人は、強いものに引っ張られます。
派手なものに目を奪われます。
勝ち負けがはっきり見えるものに、血が騒ぐこともあります。
ですから、ブレイキングダウンだけを捕まえて、今の若者はおかしい、今の時代は物騒になったと騒ぎ立てるのも、少し違うのではないかと思うのです。
ただし、一つだけ。
ここだけは、昔とはまるで違います。
昔は噂、今は動画
昔であれば、誰かが喧嘩をしたとしても、せいぜい地元の噂で終わることが多かった。
「あそこの誰それが勝ったらしい」
「あいつは強いらしい」
「あそこで揉めたらしい」
そんな話が風のように流れて、しばらくすれば薄れていく。
もちろん、昔にも面倒な話はありました。
強い人間の噂を聞いて、わざわざ遠征してくる者もいた。
あいつが面白いらしい。
あそこに強いやつがいるらしい。
そんな噂だけで、本当に動く人間もいたわけです。
今は、それが動画になっただけです。
誰かが殴る。
誰かが倒れる。
それを、誰かがスマートフォンで撮る。
そして、その動画が回る。
残る。
広がる。
ここから先は、もう本人の手を離れます。
動画になった瞬間、自分の手を離れる
本人は、仲間内で少し格好をつけたつもりかもしれません。
その場のノリだったのかもしれません。
武勇伝のつもりだったのかもしれません。
笑い話のつもりだったのかもしれません。
けれど、動画になった瞬間、それは別のものになります。
証拠になります。
素材になります。
知らない誰かが勝手に動き出すきっかけになります。
面白がる人間が出てくる。
正義感で動く人間が出てくる。
ネタにしたい人間も出てくる。
さらに目立ちたい人間も出てくる。
いわゆる私刑のようなことを始める者も出てくるでしょう。
これは、今の時代だけが特別おかしくなったという話ではありません。
昔も今も、人間の中身はそれほど変わっていないのでしょう。
ネタになるなら、どこまでも行く者がいる。
面白いと思えば、勝手に乗ってくる者がいる。
誰かを叩けると思えば、正義の顔をして動く者もいる。
ただ、昔は見えにくかった。
今は見える。
昔は残りにくかった。
今は残る。
昔は地元で広がった。
今はネットで広がる。
変わったのは、人間ではありません。
見えること。
残ること。
広がること。
ただ、それだけです。
学校や街に持ち出した瞬間、話は変わる
ブレイキングダウンを見るのは、別に悪いことではありません。
熱くなる人がいるのも分かります。
強いものに憧れる人がいるのも、昔からある話です。
ただ、その熱を学校や街に持ち出した瞬間、話は変わります。
弱いと思った相手を殴る。
蹴る。
囲む。
それを動画に撮る。
その場では勝ったように見えるかもしれません。
仲間内では笑い話になるかもしれません。
けれど、今の時代はそこで終わりません。
動画は残ります。
人は勝手に動きます。
ネタになると思えば、どこまでも追いかける者も出てきます。
殴った側は次の日には忘れるかもしれません。
しかし、殴られた側は忘れない。
見ていた人間も忘れない。
動画を見た知らない誰かも、勝手に忘れません。
自分の勝手で始めたものが、自分の知らないところで回り始める。
そこが、今の時代の怖さです。
慢心、欲、勝手で動くと、最後に返ってくる
人間で危ないのは、慢心、欲、勝手だと思っています。
「こいつなら大丈夫だろう」という慢心。
「目立ちたい」「格好よく見られたい」という欲。
「自分がやりたいからやる」という勝手。
この三つで人を殴ると、あとで妙な形で返ってくることがあります。
弱いと思っていた相手が、いつまでも弱いとは限りません。
その場では黙っていても、腹の中に何を溜めているかは分かりません。
それに、本人が何もしなくても、動画を見た別の誰かが勝手に動くこともあります。
面白がって動く者。
正義感で動く者。
さらに有名になりたくて動く者。
相手を特定しようとする者。
昔なら噂で動いた人間が、今は動画で動く。
手口が変わっただけです。
人間は変わらない。変わったのは可視化されたこと
今の時代が、急におかしくなったわけではありません。
昔も、人間は人間でした。
強いものに憧れる者もいた。
噂を聞いて動く者もいた。
面白い話に乗ってくる者もいた。
自分の勝手で人を傷つける者もいた。
ただ、昔は見えにくかった。
今は、スマートフォンがあります。
SNSがあります。
動画があります。
見える。
残る。
広がる。
この三つがそろったことで、昔なら地元の中で終わった話が、知らない人間のところまで届くようになりました。
だから、ブレイキングダウンを見て何が悪いのかと聞かれれば、見ること自体が悪いとは思いません。
問題は、そのあとです。
見た熱を、現実に持ち出す。
学校や街で誰かに向ける。
それを動画に残す。
そこから先は、もう自分だけの話ではなくなります。
結局、自分の勝手で始めたものが、最後は自分に返ってくる。
昔も今も、人間社会の構図はそれほど変わっていません。
変わったのは、可視化できるか、できないか。
残るか、残らないか。
広がるか、広がらないか。
手口が変わっただけの話なのです。
編集後記
ブレイキングダウンを見るな、という話ではありません。
人が熱狂するものは、昔からありました。
プロレスも、格闘技も、暴走族の映像も、ヤクザ映画も、見た人間の気持ちを大きくさせる力がありました。
ただ、今は動画が残ります。
昔なら噂で終わった話が、今は証拠として残る。
昔なら地元で済んだ話が、今は知らない人間まで動かす。
人間は変わっていない。
変わったのは、見えるようになったこと。
そこを忘れると、ただのノリが人生に返ってくることがあります。
参考リンク
この記事の内容に関連するニュース・公式情報です。ブレイキングダウンそのものの是非というより、「動画で残ること」「SNSで広がること」「暴力が可視化されること」を考えるための材料として置いておきます。
- BreakingDown / ブレイキングダウン 公式サイト
ブレイキングダウンの公式サイト。この記事で扱っている入口となる格闘エンタメそのものを確認するためのリンク。 - 【公式】BreakingDown / ブレイキングダウン – YouTube
公式YouTubeチャンネル。試合やオーディション、関連動画がどのように見られているかを確認するためのリンク。 - 文部科学省|SNS上における暴力行為等の動画の投稿・拡散を受けた緊急の対応について
児童生徒間の暴力行為等の動画がSNS上で投稿・拡散された事案を受け、学校や教育委員会に対応を求めた文科省の資料。 - 熊本朝日放送|暴行動画のSNS拡散めぐり緊急会議「調査と情報モラル教育を」文部科学省
暴行動画のSNS拡散を受け、文科省が各地の教育委員会に調査や指導を求めたことを伝えるニュース。 - 日テレNEWS|暴行動画SNS拡散 少年に暴行を加えた男子中学生を逮捕
暴行動画がSNSで拡散し、逮捕につながった事例を伝えるニュース動画。動画が残り、広がる時代の具体例。 - YouTube|暴力的で刺激の強いコンテンツに関するポリシー
暴力行為を促すコンテンツや、衝撃・不快感を与える暴力的コンテンツについてのYouTube公式ポリシー。 - YouTube|ハラスメントやネットいじめに関するポリシー
晒し行為、脅迫、未成年者を標的にしたコンテンツなどに関するYouTube公式ポリシー。 - TikTok|暴力および危険行為に関するポリシー
危険な行為、チャレンジ、暴力を表示・促進することを禁じるTikTok側の公式ポリシー。
ROJOTOでは、ニュースや動画の表面だけではなく、その奥にある人間の動きや生活への跳ね返りを考えています。
昔は噂で済んだことが、今は動画になり、残り、広がる。そこに今の時代の怖さがあります。
今後もROJOTOでは、生活の中にある違和感や、ニュースの裏にある人間の動きを掘り下げています。
きれいごとではなく、現実の目線で考えたい方は、ほかの記事もあわせて読んでみてください。



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