なぜ拡大した?menu「2月に305エリア拡大」から半年でサービス終了 振り回された専業配達員と撤退後に起きること

2026年1月・2月に大規模エリア拡大を行いながら約半年後にサービス終了を発表したmenuと、撤退による専業配達員への影響を表したイメージ フードデリバリー

2026年9月30日、フードデリバリーサービス「menu」が終了する。

サービスが終わること自体も大きなニュースだ。

しかし、配達員としてこのニュースを見ていると、どうしても引っかかることがある。

「ちょっと待て。menu、今年に入って大規模にエリアを広げていなかったか?」

そうなのである。

何年もかけて徐々に縮小し、最後にサービス終了を発表した――という話ではない。

2026年1月6日、menuは関東・関西で新たに216エリアを公開。さらに既存182エリアでも掲載店舗数や配達体制を強化した。

そして2月3日には、さらに6都府県305エリアでサービスの新規提供・拡充を実施。東京都の一部では24時間配達まで開始している。

それから約6か月半。

8月19日、KDDIはmenuを9月30日で終了すると発表した。

しかもサービスだけではない。menu株式会社そのものも、サービス終了後に解散・清算される予定だ。

では聞きたい。

あの大規模拡大は一体何だったのか。

2026年1月、menuは216エリアを一気に追加していた

まず時系列を戻そう。

2026年1月6日、menuは埼玉県・東京都・神奈川県・京都府・大阪府・兵庫県の6都府県で、新たに216エリアのサービス提供を開始した。

さらに既存182エリアについても、掲載店舗数や配達体制を強化すると発表している。

特に大きかったのが神奈川県だ。

神奈川県だけで136エリアが一斉に公開された。

青葉台、市ケ尾町、あざみ野、長津田など、それまでmenuの存在感が決して強いとは言えなかった郊外にもエリアが広がった。

筆者が普段配達している横浜市青葉区周辺も、この拡大の対象となった地域である。

この発表だけを見れば、普通はこう考える。

「menuは2026年も事業を拡大していくんだな」

少なくとも、「あと8~9か月でサービスそのものを終了する会社」の動きには見えない。

さらに2月、今度は305エリアを拡大

ところがmenuの拡大は1月だけでは終わらない。

2月3日、menuは埼玉県・千葉県・東京都・京都府・大阪府・兵庫県で、合計305エリアの新規提供・拡充を発表した。

内訳を見ると、161エリアで新たにサービスを開始。

さらに既存134エリアでは、掲載店舗数や配達体制を強化した。

そして東京都の10エリアでは、なんと24時間配達まで開始している。

1月に216エリア。

2月に305エリア。

店舗を増やす。

配達体制も強化する。

24時間化まで進める。

ここまでやれば、配達員側が「今後menuの仕事が増えるのではないか」と考えても不思議ではない。

それが8月、「9月30日で終了します」

ところが8月19日。

KDDIは、フードデリバリーサービスmenuを2026年9月30日で終了すると発表した。

さらにKDDIはレアゾン・ホールディングスが保有するmenu株式を取得して完全子会社化し、その後menu株式会社を解散・清算する予定としている。

KDDIが説明している終了理由は、フードデリバリー市場を取り巻く「競争環境の変化」「今後の事業見通し」を総合的に検討した結果というものだ。

しかし配達員目線では、どうしても疑問が残る。

だったら、なぜ半年前にあれほど大規模な拡大をしたのか。

可能性① 本当に成長路線だったが、半年で撤退判断に変わった

まず考えられるのは、2026年初頭の段階では、本当にmenuを拡大する方針だった可能性だ。

その後、注文数、配達コスト、販促費、競合サービスとの競争などを見た結果、事業継続が難しいという判断に変わった。

これなら1月・2月の拡大と8月の終了は一応つながる。

ただし、その場合は別の疑問が出てくる。

わずか半年程度で事業を清算するところまで判断を変えさせたものは何だったのか。

ここはKDDIの発表だけでは分からない。

可能性② あの拡大自体が「最後の勝負」だった

もう一つ考えられるのがこちらだ。

事業が厳しかったからこそ、エリアを広げ、店舗を増やし、配達体制を強化し、24時間化まで行った。

つまり「好調だから拡大した」のではなく、「このままでは厳しいから拡大して数字を作ろうとした」という可能性である。

企業のエリア拡大を見て、外部の人間はつい「成長している」と考えてしまう。

しかし、拡大=好調とは限らない。

最後のテコ入れだった可能性だってある。

そして、そのテコ入れをしても事業見通しが改善しなかったのであれば、半年後の撤退にも説明はつく。

ただし、menuやKDDIが「2026年初頭のエリア拡大は撤退回避のためだった」と説明しているわけではない。

ここはあくまで時系列から考えられる一つの可能性として区別しておきたい。

Rocket Now参入など、競争環境も大きく変わった

2025年から2026年にかけて、国内フードデリバリー市場の競争環境も大きく変化している。

Rocket Nowが日本市場へ参入し、Uber Eats、出前館など既存サービスとの競争がさらに激しくなった。

一方ではWoltも日本市場から撤退した。

KDDI自身がmenu終了理由として「競争環境の変化」を挙げている以上、この市場環境が判断材料の一つになったこと自体は読み取れる。

ただし、Rocket Nowなど特定の競合サービスがmenu撤退にどの程度影響したのかについて、KDDIは具体的な内訳を公表していない。

したがって「Rocket Nowがmenuを潰した」といった単純な話にするべきではない。

重要なのは、menuが大型拡大を行った2026年初頭から撤退発表までの短期間に、事業を取り巻く環境と将来見通しを再評価する何かがあったということだ。

一番振り回されたのは「これからもmenuで稼ごう」と考えていた配達員ではないか

そして、今回の時系列で忘れてはいけないのが配達員だ。

副業でたまにmenuをオンラインにする程度なら、終了しても「一つアプリが減った」で済む人もいるだろう。

しかし専業は違う。

フードデリバリーを主な収入源としている人間は、その地域の注文量、時間帯、報酬、インセンティブ、他社との組み合わせを見ながら一日の売上を作っている。

特にmenuの注文密度が高く、menu中心でも一日を回せていた都市部の配達員にとって、今回の終了はかなり大きい。

2026年初頭にエリアが広がった。

配達体制も強化すると発表された。

24時間化する地域まで出てきた。

それを見て、

「これからmenuが伸びるかもしれない」

「menuを軸に稼働していこう」

「Uberだけではなくmenuも本格的に使おう」

と考えた配達員がいたとしても、何も不自然ではない。

それが半年後に、

「9月30日でサービスを終了します」

である。

逆の立場なら「は?」と思う配達員がいて当然だろう。

ただし地域によってmenu終了の重さはまったく違う

ここは一括りにしてはいけない。

筆者の稼働拠点は横浜市青葉区のみたけ台周辺だ。

この周辺でmenuだけを使い、朝から夜まで安定して一日の売上を作れるかと言われれば、少なくとも筆者の稼働感覚では疑問がある。

Uber Eatsを中心にして、他社を補助的に使う方が現実的な地域だ。

そのため筆者自身にとっては、menu終了によって明日から一日の売上設計そのものが崩壊する、というほどの直接的な影響ではない。

しかしmenuの注文密度が高い都市部は事情が違う。

menuで一日を回せる地域でmenuを主力にしていた専業配達員。

この層にとっては「サブアプリが消えた」ではない。

仕事場が一つ消える。

こちらに近い。

そしてmenu配達員は消えない Uberや出前館へ移動する

さらに重要なのはここからだ。

menuが終了したからといって、menuで生活していた配達員まで消えるわけではない。

生活費は翌月からも必要だ。

では、その配達員はどこへ行くのか。

当然、Uber Eats、出前館、Rocket Nowなど、残ったサービスへ移っていくことになる。

するとmenuをほとんど使っていなかった配達員にも影響が出る可能性がある。

menu撤退で「配達員のバランス」が崩れる可能性

フードデリバリーの稼ぎやすさは、注文数だけで決まるものではない。

注文数と、その地域でオンラインになっている配達員数のバランスが重要だ。

例えば、ある都市部でUber Eatsを中心に稼働している配達員が1000人、menuを主力にしている配達員が300人いたとしよう。

これは説明のための仮定の数字だ。

menu終了後、その300人のうち200人がUber Eatsへ比重を移したとする。

Uber側の配達員は1000人から1200人になる。

しかしmenu終了と同時にUberの注文が20%増えるとは限らない。

そうなれば、一人あたりが受け取れる案件数には下押し圧力がかかる。

鳴りが弱くなる。

待機時間が増える。

案件を取る競争が強くなる。

結果として時間あたり売上が落ちる可能性もある。

つまりmenu終了で影響を受けるのは、menu配達員だけではない。

menuで一度も配達していなかったUber配達員まで影響を受ける可能性がある。

Woltに続いてmenuも消える 専業ほど「一社依存」は危険になる

2026年、日本のフードデリバリー市場ではWoltが撤退し、今度はmenuも終了する。

配達員側から見ると、これはかなり重要な変化だ。

報酬が下がる。

クエストが変わる。

配車アルゴリズムが変わる。

そうした変化だけを警戒していればいい時代ではない。

プラットフォームそのものがなくなる。

今回のmenuが、それを現実として見せた。

しかも終了の半年前には大規模なサービス拡大をしていた会社である。

配達員から企業内部の経営判断は見えない。

だからこそ「最近エリアを広げたから大丈夫だろう」「大企業が関わっているからなくならないだろう」と考えて、一社だけに生活を預けるのは危険だ。

menuはなぜ拡大したのか その答えはまだ見えていない

2026年1月。

216エリアを新規公開し、既存182エリアを強化。

2月。

305エリアで新規提供・拡充し、一部東京都内では24時間化。

そして8月。

サービス終了を発表。

9月30日。

menuは終了する。

この時系列を見る限り、「何年も前から静かに畳んでいたサービス」という説明では足りない。

本当に2026年初頭までは成長路線だったのか。

それとも大規模拡大そのものが最後のテコ入れだったのか。

そして、その後の数か月で何が決定打になったのか。

現時点でKDDIがそこまで詳細に説明しているわけではない。

ただ、一つだけ確かなことがある。

企業が事業を終了すれば、その会社だけで話は終わらない。

そこで働いていた専業配達員は別のプラットフォームへ移る。

その結果、残ったプラットフォームの配達員数と注文数のバランスまで変わる。

menuを主力にしていた人には直接の打撃。

menuを使っていなかった人にも間接的な影響。

だから今回のmenu撤退は、「menuユーザーとmenu配達員だけのニュース」ではない。

フードデリバリーで稼いでいるすべての専業配達員が、自分の地域で配達員の流れがどう変わるかを見るべきニュースである。

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