撮り鉄が道路を塞ぎ110番通報5件、それでも暴行した男性だけが悪いのか? 徳島・鳴門事件が残した問題

徳島県鳴門市の撮り鉄暴行事件を描いたイメージ画像。踏切付近の道路に集まる撮影者と車の運転手の口論を再現し、「対策しない放置プレイの結果」「110番通報5件」と表示。 一般ニュース

撮り鉄と地元住民の衝突。その原因は何だったのか

2026年8月14日、徳島県鳴門市のJR高徳線・居屋敷踏切付近で、鉄道写真を撮影していた19歳の男性と、車で通りかかった55歳の男性との間でトラブルが発生しました。

55歳の男性は、撮影者の胸ぐらをつかみ、その後、相手に向けて車をバックさせたとして逮捕されました。

当初は殺人未遂などの容疑で逮捕されましたが、9月には暴行罪で起訴。10月9日の初公判では、起訴内容を認めています。

車を使って相手を威嚇する行為は極めて危険です。暴力を正当化することはできません。

しかし、この事件にはもう一つ、見過ごせない問題があります。

そもそも、なぜ一般の車が通る道路に大勢の撮り鉄が集まり、通行を妨げるような状況になっていたのでしょうか。

道路の半分を塞いでいたとされる撮り鉄集団

事件当日、現場には多数の鉄道写真愛好家が集まっていました。

10月25日の日刊SPA!によると、被告は捜査段階で約40人が集まり、道路の半分ほどを占有していたと供述しています。一方、被害者側は約20人と説明しており、人数には食い違いがあります。

ただし、道路の占有状況については、四国放送も9月7日の報道で、撮り鉄が道路の半分程度を塞いでいたと伝えています。

鉄道を撮影すること自体は自由です。しかし、一般車両が通行する道路を撮影場所として占有する権利まで認められているわけではありません。

三脚や脚立を置き、大勢が道路にはみ出していれば、車の通行だけでなく歩行者の安全にも影響します。

鉄道写真を撮りたいという個人の希望が、地域住民の日常生活より優先されてよいのでしょうか。

事件当日、撮り鉄のマナーに関する110番通報が5件

さらに注目したいのが、事件当日の警察への通報です。

8月18日付の徳島新聞の記事を引用した複数の二次資料では、徳島県警によると、当日は撮り鉄のマナーに関する110番通報が5件あったと伝えられています。

ただし、この5件については徳島新聞の原文を直接確認できていないため、現時点では二次資料に基づく情報です。

仮にこの報道が原文どおりであれば、現場の問題は単なる一人の運転手の不満ではなかった可能性があります。

ここで確認すべきなのは、通報が事件の前だったのか後だったのか、警察官が現場に出動していたのか、撮影者にどのような指導を行ったのかという点です。

5件の通報があったことだけで、警察が事件を防げたと断定することはできません。

しかし、道路の安全を守るという観点から、通報への対応状況は検証する価値があります。

「集まりたいから集まってんのや」で済む話なのか

日刊SPA!が報じた事件当時のやり取りでは、被告が撮影者らに集まっている理由を問いただした際、集団の一人から「集まりたいから集まってんのや」という趣旨の発言があったとされています。

この言葉が事実なら、公共の道路を利用するうえでの意識が問われます。

道路は鉄道ファンだけのものではありません。

通勤する人、買い物に出かける人、仕事で車を運転する人、そして地域で生活する人たちが利用する公共空間です。

大勢で集まること自体が直ちに違法になるわけではありませんが、他人の通行を妨げるのであれば話は別です。

道路交通法第76条は、交通を妨害するような方法で道路に物を置いたり、立ち止まったりする行為を禁止しています。

今回の撮影者らに同条違反が成立するかどうかは、実際の道路状況や個々の行為を確認しなければ判断できません。

それでも、撮影の自由と道路利用者の安全を混同してはならないでしょう。

暴行した男性の責任は消えない

一方で、55歳の男性が取った行動は明らかに行き過ぎています。

胸ぐらをつかむだけでなく、相手に向けて車をバックさせる行為は、重大な事故につながりかねません。

被告は、相手を怖がらせるつもりだったと説明し、殺意は否定しています。

検察は最終的に暴行罪で起訴しましたが、罪名を変更した具体的な判断理由は明らかになっていません。

仮に撮り鉄側が通行を妨害していたとしても、それを理由に暴力を振るってよいわけではありません。

ただし、ここで重要なのは、男性の暴行が犯罪であることと、撮影者側の道路使用に問題があったかどうかは、別々に判断すべき問題だということです。

片方に責任があるからといって、もう片方の行動が自動的に正当化されるわけではありません。

事件後、JR四国と徳島県警が連携対策へ

この事件を受け、9月27日付の徳島新聞は、JR四国と徳島県警が撮り鉄の迷惑行為やマナー違反に連携して対処する方針を固めたと報じました。

これは重要な動きです。

事件後に鉄道会社と警察が連携する方針を示したことは、撮影者の行動をめぐる問題が、地域の安全管理上の課題として扱われていることを意味します。

ただし、対策の具体的な運用や、事件当日に撮影していた人たちへの処分の有無は、今回確認できた公開資料からは分かりません。

本来必要なのは、事件が発生してからの対応だけではなく、混雑する撮影場所で危険な行為が起きないようにする仕組みです。

鉄道ファン全体を悪者にしてはいけない

ここで区別しておきたいのは、撮り鉄と呼ばれる人たち全員が迷惑行為をしているわけではないということです。

安全な場所から列車を撮影し、地域住民や鉄道会社のルールを守っている愛好家もいます。

問題なのは趣味そのものではなく、他人の生活や安全を軽視する行動です。

そして、迷惑行為が繰り返されれば、結果的にルールを守る愛好家の撮影環境まで制限されかねません。

一部の人の行動が、趣味全体の評判を悪くしてしまう。その構造こそ考える必要があります。

最後に問いたいのは、道路を誰が守るのかということ

今回の事件は、暴行した55歳の男性が起訴されたことで、刑事事件としての責任追及が進んでいます。

しかし、事件の発端となった道路の占有状況については、まだ十分に明らかになっていません。

撮影者の道路使用は適切だったのか。警察は110番通報にどう対応したのか。今後、同じ場所でトラブルを防ぐために何をするのか。

こうした問題も、暴行事件とは別に検証されるべきでしょう。

暴力を許さないことと、迷惑行為を放置しないこと。この二つは決して矛盾しません。

むしろ、どちらか一方だけを問題にするのでは、同じような衝突を防ぐことは難しいのではないでしょうか。

鉄道写真を撮る自由も、地域住民が安全に道路を通行する自由も、互いに尊重される必要があります。

今回の事件を、一人の男性の暴走だけで終わらせてよいのか。

その問いを残しておきたいと思います。

参考資料

 

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