利用者が持っているギフトを盗むのではなく、ギフトを新たに不正発行する。ギフティで明らかになった不正アクセスは、デジタルギフトの発行機能が悪用された事案だった。
ギフティグループは2026年10月26日、連結子会社のギフティが運用する一部システムに第三者が不正アクセスし、eギフトを不正に発行したと発表した。本件に起因する損失は、現時点で約5億5,000万円と見込んでいる。
ただし、この数字を「利用者から盗まれた金額」と捉えると、事件の構図を見誤る。会社の説明によれば、利用者が保有するeギフトなどの不正使用や、保有資産の減少・毀損は確認されていない。金銭的な損失は同社グループに発生するという。
今回の事案で何が起き、何がまだ説明されていないのか。10月26日付の適時開示を中心に整理する。
10月25日に不正発行が判明、対象システムを停止
同社によると、10月25日、対象システムの脆弱性を悪用した第三者による不正アクセスと、同システムを経由したeギフトの不正発行が判明した。
会社は原因となった脆弱性を特定し、同日に対象システムを停止。当該経路を通じた不正発行を遮断したとしている。停止したシステムは、今後も利用を再開しない方針だ。
ここで区別すべきなのは、不正が判明した日と、攻撃が始まった日時である。公表資料では10月25日の判明と停止が説明されているが、不正アクセスの開始時刻や継続期間までは示されていない。
また、停止の対象は運用システムの一部である。ギフティのサービス全体を終了するという発表ではなく、その他の主要サービスは通常どおり稼働しているという。
利用者の保有ギフトへの被害は確認されず
会社が公表した被害と対応は、次のように整理できる。
| 項目 | 会社の説明 |
|---|---|
| 不正の内容 | 対象システムを介したeギフトの新規不正発行 |
| 損失見込み | 約5億5,000万円 |
| 利用者の保有資産 | 減少・毀損は確認されていない |
| 個人情報 | 本件による漏えいは確認されていない |
| 対象システム | 停止済み。今後も利用を再開しない方針 |
一方、対応に伴って一部のeギフト交換サービスには一時的な利用上の支障が生じた。会社は、これらの支障は順次解消していると説明している。
「保有資産の被害は確認されていない」ことと、「利用への影響が一切なかった」ことは別である。利用者への影響を伝える際には、資産の被害とサービス上の支障を分ける必要がある。
5億5,000万円は換金額でも確定損失でもない
約5億5,000万円という規模は大きい。ただし、適時開示で示された数字の位置付けは、あくまで現時点の損失見込みだ。
共同通信やFNNは「約5億5,000万円分」のeギフトが不正発行されたと報じている。一方、会社の開示は「本件に起因する損失」を約5億5,000万円と見込むという書き方であり、その算定内訳は示していない。
このため、会社側の損失見込みを、そのまま攻撃者が手にした金額や現金化した金額と同一視することはできない。
不正発行されたギフトの種類、発行件数、実際の利用・換金状況、攻撃者の身元についても、今回確認した開示には記載がない。損失をどのように算定したのかは、今後の説明で確かめるべき点である。
同社は、この損失を2026年12月期第4四半期に特別損失として計上する見込みとしている。売上高と営業利益への重大な影響は現時点で見込んでいないとの説明もあるが、それによって特別損失がなくなるわけではない。
発行機能を守る仕組みは、どこまで働いていたのか
今回の事案から読み取れるのは、個人情報が流出しなくても、サービスの機能が悪用されれば企業に大きな金銭的損失が生じ得るということだ。
ただし、会社が明らかにした攻撃手法は「システムの脆弱性を悪用した」という範囲にとどまる。認証の不備だったのか、発行処理の欠陥だったのか、別の問題だったのかを、公表資料だけで特定することはできない。
検証すべきなのは、脆弱性が存在した理由だけではない。不正な発行をどの段階で検知できたのか、被害の拡大を抑える管理がどう働いたのかも重要になる。これらは今後の検証課題であり、特定の対策が欠けていたと確認された事実ではない。
ギフティグループは、影響範囲の確認を続け、eギフト発行に関する管理体制と監視体制の強化などに取り組むとしている。警察への相談・届出等、必要な対応も進める方針だ。
約5億5,000万円という損失見込みに対し、発行の件数や期間、検知までの経緯はまだ分からない。今後の説明に求められるのは、「監視を強化する」という方針を、今回の不正がどこで止められるはずだったのかという具体的な検証につなげることである。
参考資料
- ギフティグループ「当社連結子会社の一部システムへの不正アクセスに伴うeギフトの不正発行および特別損失計上見込みに関するお知らせ」(2026年10月26日)
適時開示資料を読む(PDF・みんかぶ掲載) - 共同通信「5・5億円分のデジタルギフトが不正発行」(2026年10月26日20時44分、熊本日日新聞掲載)
共同通信の記事を読む - FNNプライムオンライン「『eギフト』5億5000万円分不正発行 企業・自治体のメール配信企業では5000万件超の漏洩も 不正アクセス被害深刻化」(2026年10月27日6時10分)
FNNの記事を読む
※2026年10月26日付の会社開示および上記報道に基づく。損失額と影響範囲は調査中の情報を含む。



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