「SNSで悪口を書いただけ」では、もう済まない。
=LOVE(イコールラブ)、≠ME(ノットイコールミー)、≒JOY(ニアリーイコールジョイ)の運営が、所属タレントに対するインターネット上の誹謗中傷について、本格的な法的対応を進めています。
2026年8月26日に発表された声明では、これまでも悪質性の高い投稿から順に、投稿者を特定するための発信者情報開示請求を進めてきたと説明。
そして今回、新たに「20件以上の投稿」を対象として請求を行っていくことを明らかにしました。
さらに今後についても、投稿の削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求などの民事上の措置だけでなく、必要に応じて刑事上の手続きも含めて対応するとしています。
ここまでなら「芸能事務所による誹謗中傷への警告」として珍しくないようにも見えます。
しかし今回、注目したいのは「20件以上」という数字です。
では、これだけの案件を本当に弁護士を使って処理すると、いったいいくら掛かるのでしょうか。
発信者情報開示請求は無料ではない
SNSに匿名で投稿された誹謗中傷について損害賠償を求めようとしても、まず相手が誰なのか分からなければ請求できません。
そこで必要になるのが、SNS運営会社や通信事業者などを通じて投稿者を特定する発信者情報開示請求・発信者情報開示命令です。
当然ながら、弁護士に依頼すれば費用が掛かります。
複数の法律事務所が公表している料金を見ると、発信者を特定するための手続きについて、着手金や成功報酬などを合わせ40万円台から70万円前後になる料金設定が確認できます。
また、ネット上の誹謗中傷を扱う法律事務所による解説では、開示請求を弁護士へ依頼した場合の総額について、50万円~70万円程度をひとつの目安としている例もあります。
もちろん案件の難易度、利用されているSNS、通信事業者、海外法人が関係するか、裁判手続きが必要になるかなどによって金額は変わります。
そこで今回は、分かりやすく「投稿者1人を特定するまで50万~70万円」として計算してみます。
| 対象となる投稿者 | 1人50万円の場合 | 1人70万円の場合 |
|---|---|---|
| 1人 | 50万円 | 70万円 |
| 5人 | 250万円 | 350万円 |
| 10人 | 500万円 | 700万円 |
| 20人 | 1000万円 | 1400万円 |
もし今回対象となった20件以上の投稿が、すべて別々の投稿者によるものだった場合。
単純計算では、投稿者を特定するところまでで1000万~1400万円規模になる可能性があります。
誹謗中傷対策というものが、決して「弁護士にちょっと相談して終わり」という話ではないことが分かります。
ただし「20件の投稿=20人」ではない
ここは重要なので、数字だけが一人歩きしないように整理しておきます。
運営が発表しているのは、あくまで「20件以上の投稿」です。
20人以上の投稿者を特定すると発表したわけではありません。
例えば、同じ1人が10件の問題投稿をしていれば、投稿数としては10件でも対象となる投稿者は1人です。
同一人物による複数の投稿や、同一サービス上の複数投稿について、法的手続きをまとめて進められるケースもあります。
さらに芸能事務所側が顧問弁護士や継続的に依頼している法律事務所と個別の料金契約を結んでいれば、一般消費者向けに公開されている料金表をそのまま20倍することもできません。
したがって、「今回、運営が1400万円払っている」などと断定することはできません。
1000万~1400万円という数字は、20件がすべて別々の投稿者で、それぞれについて一般的な料金水準で発信者特定を行った場合の試算です。
しかも投稿者を特定して終わりではない
今回の声明でさらに重いのはこちらです。
運営は発信者情報開示請求だけではなく、今後も必要に応じて損害賠償請求を行う方針を示しています。
投稿者を特定した後、内容証明などによる示談交渉を行い、まとまらなければ損害賠償請求訴訟へ進むことも考えられます。
法律事務所の公開料金を見ると、開示請求後の損害賠償交渉や訴訟について、さらに十数万円~数十万円程度の着手金や追加費用に加え、回収額に応じた成功報酬を設定している例があります。
仮に20人全員を特定し、さらに全案件で損害賠償交渉や裁判まで進めるという極端なケースなら、外部弁護士への費用総額が1500万円~2000万円台に達しても不思議ではありません。
繰り返しますが、これは公開されている一般的な弁護士料金から計算したシミュレーションであり、=LOVEなどの運営が実際に支払っている金額ではありません。
過去には開示費用55万円や88万円超が損害として認められた裁判例も
ここでもう一つ、投稿者側にとって無視できない問題があります。
発信者を特定するために被害者側が支払った費用について、最終的に投稿者側へ請求されることがあるという点です。
法律事務所が紹介している裁判例では、発信者情報開示に要した55万円全額が損害として認められたケースや、投稿者特定のための調査費用88万5600円全額が認められたケースがあります。
一方で、77万円掛かったうち33万円だけが損害として認められた事例もあり、必ず全額を投稿者が負担するという意味ではありません。
それでも「慰謝料だけ払えば終わる」と考えるのは危険です。
損害賠償、投稿者特定のための調査費用の全部または一部、場合によっては自分自身が依頼する弁護士費用まで考えれば、SNSへの1投稿が数十万円から100万円を超える金銭問題に発展する可能性があります。
なぜそこまで金を掛けて20件以上を追うのか
ここが今回の声明で最も重要な部分でしょう。
仮に数百万円、場合によっては1000万円単位の費用が掛かるとしても、運営は法的対応を進めると表明しています。
これは単純に「1人の投稿者から何万円取れるか」という採算だけで考える話ではありません。
一度悪質な投稿を放置すれば、別のアカウントが便乗し、それを引用し、さらに拡散される。
結果として所属タレントへの攻撃が日常化してしまえば、タレント本人の活動環境だけでなく、グループや事務所のブランドにも影響します。
逆に「悪質な投稿については実際に開示請求を行い、必要なら損害賠償まで行く」という前例を積み上げれば、次に投稿しようとする人間に対する抑止力になります。
つまり、1件単体の回収額だけを見るのではなく、所属タレントと事業全体を守るためのコストとして考えれば、運営がまとまった件数を対象にする理由も見えてきます。
「匿名アカウントだから大丈夫」は通用しない
XなどのSNSでは、実名を出さずに利用している人も少なくありません。
しかし、アカウント名が偽名だから投稿者まで完全に匿名になるわけではありません。
今回の声明でも運営は、匿名投稿であっても法的手続きによって投稿者が特定されることがあると明確に注意を促しています。
そして運営は今回、単なる注意喚起だけではなく、すでに悪質性の高い投稿について発信者情報開示請求を進めてきたと説明しています。
つまり「今後ひどかったら考えます」という段階ではありません。
すでに動いており、さらに20件以上を追加する。
今回のニュースの重さはここにあります。
もちろん芸能人への批判すべてが誹謗中傷になるわけではない
一方で、芸能人やアイドルについて否定的な意見を書けば、何でも発信者情報開示請求が認められるわけでもありません。
作品や活動に対する批評、好き嫌い、意見まで禁止されるわけではありません。
問題になるのは、投稿内容や表現、虚偽情報、プライバシー侵害、執拗な攻撃などによって他人の権利を侵害する領域に入った場合です。
「批判」と「何を書いてもいい」は別の話です。
SNSでは画面を数回タップすれば投稿できます。しかし、その数十文字の責任まで軽くなるわけではありません。
まとめ 20件超という数字は運営の本気度を示している
=LOVE、≠ME、≒JOYの運営は2026年8月26日、所属タレントへの誹謗中傷を巡り、新たに20件以上の投稿を対象として請求を進めることを表明しました。
一般的な弁護士費用から試算すれば、発信者を1人特定するだけでも50万~70万円程度掛かるケースがあります。
20件が20人別々なら、単純計算で1000万~1400万円。
その後の損害賠償請求まで全件で争えば、さらに費用は増える可能性があります。
もちろん実際には同一人物の複数投稿が含まれている可能性があり、事務所と弁護士との契約内容も不明です。そのため、運営が実際に支払う金額を外部から断定することはできません。
それでも一つだけは明確です。
20件以上をまとめて対象にすると公表した以上、「警告文だけ出して終わり」という対応とは明らかに違います。
SNSでは投稿ボタンを押すのは無料です。
しかし、その1投稿を巡って発信者情報開示、投稿者特定、示談交渉、損害賠償請求まで進めば、無料で終わる保証などありません。
「匿名だから」「SNSだから」「悪口を書いただけだから」。
そう考えている人ほど、今回の20件超という数字が何を意味するのか、一度考えた方がよさそうです。
※弁護士費用の金額は、複数の法律事務所が公開している料金や解説を基にした一般的な目安・試算です。=LOVE、≠ME、≒JOYの運営が実際に負担している弁護士費用、対象となる投稿者数、契約内容は公表されていません。


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