首都高を走っていたら、前方から黒煙。
路肩には燃えている車。ところが、その横を後続車が次々と通過していく――。
首都高速道路が2026年9月16日の定例会見で改めて注意を呼びかけたのが、首都高で増えている車両火災です。
2025年度の発生件数は26件。
2024年度の21件からさらに増え、2021年度からの5年間では約2.4倍になりました。
しかも、その約2週間後となる2026年10月1日からは首都高の通行料金も値上げされます。
車両を維持する側も、道路を維持する側も、いまコストが上がっている。
今回は単なる「首都高値上げ」の話ではありません。
なぜ車両火災が増えているのか。古い車は本当に危険なのか。そして、日頃の整備でどこまで防げるのか。
数字を分けて見ていきます。
首都高の車両火災は2025年度に26件
| 年度 | 車両火災件数 |
|---|---|
| 2024年度 | 21件 |
| 2025年度 | 26件 |
首都高速道路によると、2025年度に発生した車両火災は26件。
前年より5件増えました。
そして2021年度と比べると、5年間で約2.4倍です。
年間26件と聞けば、それほど大きな数字には見えないかもしれません。
しかし首都高の場合、一般道とは事情が違います。
高架道路やトンネルでは逃げ場が限られ、火災が起きれば通行止めや車線規制が必要になります。
首都高によると、車両火災が発生した場合の交通規制は平均で約4時間。
1台の車のトラブルが、首都圏の道路網全体に影響する可能性があります。
火災車両の55%が「車齢10年以上」
今回、かなり目を引く数字があります。
首都高で発生した車両火災のうち、55%が車齢10年以上の車だったというものです。
普通車や中型貨物車などでは、経年劣化と過酷な使用条件が重なっているケースが目立つとされています。
ここだけを見ると、
「やっぱり古い中古車は燃えるのか」
と思いたくなります。
ただし、この数字は慎重に読む必要があります。
「55%が10年以上」と「古い車は燃えやすい」は同じではない
ここは非常に重要です。
55%というのは、火災を起こした車両の中で車齢10年以上が占めた割合です。
「10年以上の車の55%が火災を起こした」という意味ではありません。
本当に車齢ごとの火災リスクを比較するなら、首都高を走っている車両全体について、
・車齢別の走行台数
・走行距離
・車種
・使用頻度
・整備状態
などを分母として比較する必要があります。
したがって現時点の数字から、単純に「10年を超えた車は危険」と決めつけることはできません。
ただし、ゴム部品、ホース、配線、シール類、冷却系などが経年劣化する以上、古い車ほど点検すべき場所が増えるのは確かです。
実は「5年未満」の車も約2割ある
さらに興味深いのがこちらです。
首都高によると、車齢5年未満の比較的新しい車も、火災車両の約2割を占めています。
つまり、
「新しい車なら燃えない」わけでもありません。
首都高側は、後付け電装品の配線不良やメンテナンス不良などを原因として推定しています。
ドラレコ、追加ライト、オーディオ、充電機器など、現在の車には後からさまざまな電装品を取り付けることがあります。
取り付け方法や配線処理に問題があれば、車齢とは関係なくトラブルの原因になる可能性があります。
首都高が挙げる主な火災原因
首都高速道路は以前から、車両火災についてオーバーヒートやオイル漏れなどが原因とみられるエンジン部からの出火が多いと注意を呼びかけています。
タイヤのバーストから火災につながるケースもあります。
つまり見るべきなのは車の年式だけではありません。
冷却水、エンジンオイル、タイヤ、電装系。
普通の点検項目を放置しないことです。
中古車を安く買うこと自体が悪いのではありません。
問題なのは、安く買ったあとに整備費まで削ることです。
中古車で本当に削ってはいけないのは「整備費」
50万円の中古車。
30万円の軽自動車。
10年以上落ちの仕事用車。
価格だけ見れば魅力があります。
しかし中古車は、購入価格と維持費を分けて考える必要があります。
車両価格を20万円安くできても、その後に冷却系、オイル漏れ、タイヤ、ベルト、バッテリー、電装系の整備を放置すれば意味がありません。
特に仕事で毎日走る車は、一般家庭の買い物車とは走行条件が違います。
長時間走行、渋滞、夏場の高温、荷物の積載。
年式だけではなく、どう使われてきた車なのかを見る必要があります。
火災車両を見ても「横を抜ければいい」ではない
今回の会見では、トンネル内で燃えている車両の横を後続車が次々と通過する映像も紹介されました。
首都高が改めて呼びかけているのは、
火災車両を追い越さず、その手前で停止すること。
そしてトンネル入口などに停止信号が出ている場合は、信号に従うことです。
「まだ通れるから行ってしまおう」は危険です。
火災は突然拡大する可能性があり、煙や熱がこもりやすいトンネルでは特に危険性が高くなります。
そして10月1日、首都高は値上げ
車両火災への注意喚起とほぼ同じ時期、首都高では料金改定も始まります。
| 項目 | 現行 | 2026年10月1日以降 |
|---|---|---|
| 普通車の距離単価 | 29.52円/km | 32.472円/km |
| 普通車下限料金 | 300円 | 300円 |
| 普通車上限料金 | 1,950円 | 2,130円 |
| 軽・二輪上限料金 | 1,590円 | 1,740円 |
普通車の距離単価は約1割上昇。
全車種平均の改定率は8.1%です。
首都高は料金改定の理由として、労務費や材料費の高騰によって道路の維持管理コストが上がっていることを挙げています。
なお、中型車・大型車・特大車については、道路運送事業者の価格転嫁への配慮から、2027年6月30日まで料金を据え置く特例措置が設けられます。
道路も車も「維持費を削り続ける」ことはできない
今回のニュースを見ていると、妙に話がつながります。
道路も老朽化する。
車も老朽化する。
材料費も上がる。
整備する人の人件費も上がる。
そして、その費用を誰かが負担しなければ維持できません。
車についても同じです。
車両価格だけを安くしても、維持管理費までゼロにはできません。
特に中古車では、
「安い車を買う」ことと「整備費をケチる」ことを一緒にしてはいけない。
ここを間違えると、数万円を節約したつもりが、故障・レッカー・休業、そして最悪の場合は車両火災という形で戻ってきます。
まとめ
首都高の車両火災は、2021年度から2025年度までの5年間で約2.4倍に増えました。
2025年度だけで26件。
火災車両の55%が車齢10年以上でしたが、車齢5年未満も約2割あります。
つまり答えは、「古い車だから燃える」ではありません。
年式、経年劣化、走行条件、整備状態、後付け電装品。
それらをまとめて見る必要があります。
そして10月からは首都高料金も上がります。
車両価格も、燃料代も、高速料金も、整備代も上がる時代。
だからこそ車は、「買えるか」ではなく安全に維持できるかまで計算して持つべきものになっています。



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